『FALLOUT COLD CODE』 外伝 アンカレッジ戦争 第14章:ホワイトヘルス
第14章:ホワイトヘルス
場所:中国軍極秘基地 — AD2077年1月
広く暗い司令室。壁には戦略用のホログラムマップが浮かび上がり、幾多の作戦経過が記されている。
ジンウェイ元帥は重厚な椅子に座り、手にした写真をじっと見つめていた。
一枚は凛々しい姿のノーラ・ヘイスティングス中佐。
そしてもう一枚は、冷徹な瞳を持つ若き兵士、ネイト軍曹のものだった。
部屋の隅では、数名の将校が静かに立っていた。
元帥は低い声で語り始める。
ジンウェイ元帥
「ノーラ・ヘイスティングス……通称“ホワイトヘルス”。
2077年、アンカレッジ戦争において我が軍の迫撃砲部隊を壊滅させた伝説の存在だ。」
彼は写真を慎重にテーブルに置き、指で軽く叩いた。
「だが、もう一人の者も忘れてはならん。
ネイト軍曹。彼もまたCold Code計画の成果であり、我が国にとっては警戒すべき存在だ。」
隣にいた大佐が応答する。
大佐
「Cold Code――あの冷徹なる再生計画ですね。
ノーラもネイトも“適合者”と呼ばれ、彼らの存在が兵器化されたと聞きます。」
ジンウェイ元帥は鋭く目を光らせた。
「まさにそうだ。だが彼らの目的は謎に包まれている。
冷戦のように、影で進むプロジェクトが動いている。
我々はこの戦争に負けたが、Cold Codeを制する者こそが、未来を掴むだろう。」
元帥は窓の外に目を向け、北極の氷原を見据えた。
「ノーラもネイトも、いつか必ず再び戦場に立つ。
我が軍はその時に備えねばならん……」
その言葉は冷たく、しかし確かな決意を帯びていた。
基地の執務室。ジンウェイ元帥の隣に立つ中国軍中将が静かに口を開いた。
中将
「元帥、ノーラ・ヘイスティングス中佐は確かにやばんな殺人鬼だ。
自らの意思で、戦場を駆け抜けた凶暴な戦士だ。」
彼は書類をめくりながら続ける。
「彼女は2067年、18歳で戦いに身を投じた。
まるで戦争が彼女の血に宿っているかのように。」
中将は写真のネイト軍曹を見つめた。
「だが、ネイトは違う。純粋な人間だ。殺人鬼ではない。
22歳で大学を卒業し、ゼネラリストアトミック社に就職した。
そして2069年、24歳で政府の兵役により戦地へ送られたのだ。」
中将は拳を軽く握りしめた。
「殺すことは簡単だ。だがネイトは知らない。
彼の背後にはノーラ中佐が縦に立って護っているという事実を。」
彼は少し口元を歪めて苦笑した。
「ネイトはノーラを“弁護士”のように見ている。
それが彼の“カバーストーリー”だ。彼自身、“Cold Code”の本当の意味は知らない。」
中将はゆっくりと視線を前方に戻す。
「この戦争は単なる戦争ではない。
ノーラもネイトも、Cold Codeという巨大な陰謀の中にいる。
彼らの運命は既に繋がれているのだ。」
ジンウェイ元帥は静かに頷きながら、二人の写真を見つめ続けた。
ジンウェイ元帥
「いつか、すべてが明らかになるだろう……」
ジンウェイ元帥は、硬い机の上にネイトの写真を置いたまま、眉をひそめた。
ジンウェイ元帥
「この男……“カークランド軍曹”――ネイト・カークランドか。
ノーラ・ヘイスティングスに比べれば、あまりにも凡庸に見える。中将、詳細を頼む。」
中将は資料フォルダをめくり、淡々と語り始めた。
中将
「ネイト・カークランド。元々、戦士ではありません。
彼は**2072年の徴兵対象として選ばれた“民間科学系人材”**の一人に過ぎませんでした。」
「22歳で大学卒業後、ゼネラリスト・アトミック社に入社。
軍事とは無縁の“プロジェクト・セキュアライン”開発部門に所属。」
「その後、2069年、国家総動員法改正によって徴兵され、最前線へ。
優秀ではなかった。射撃成績も平凡、体力検査も下から数えて平均以下。」
元帥はわずかに眉を上げた。
ジンウェイ元帥
「それでなぜ、“ホワイトヘルス”が彼を守るのか……?」
中将は苦く笑い、続けた。
中将
「それが不明なのです。
ノーラ中佐は、必要以上に彼を戦闘から遠ざけ、常に側に置いてきました。
彼女の記録からは、ネイト軍曹を“戦力”ではなく、“価値ある何か”として扱っているように見える。」
「ネイト本人は、“ノーラは弁護士だった”と語っています。完全に刷り込まれた記憶=カバーストーリーでしょう。」
「要するに彼は、自分がCold Codeの中にいることも、ノーラが何者かも理解していない。」
ジンウェイ元帥は写真を見つめながら、静かに呟いた。
ジンウェイ元帥
「……なるほど。“弱さ”が、この物語の鍵かもしれん。」
「“Cold Code”は、強者のための計画ではない。
それは、無意識の者たちを利用するためのコード(暗号)だ。」
中将が言葉を付け足す。
中将
「“意志を持つ兵器”と、“意志を持たぬ人間”。
ノーラとネイト――この計画が作ろうとしているのは、そういう対(ペア)構造かもしれません。」
元帥は静かに頷いた。
ジンウェイ元帥
「“真に怖ろしいのは、無知な者に与えられた正義だ”……
我々は、次の戦争に備える必要があるな。」