『FALLOUT COLD CODE』 外伝 アンカレッジ戦争 第35章 ノーラの地獄突入──
第35章 ノーラの地獄突入──「ジンウェイ元帥暗殺作戦」
AD2077年1月18日・アラスカ戦線・敵最終防衛基地
激戦地・敵中枢施設前線
ノーラ・ヘイスティングス中佐のT-60改良空挺型は、地を蹴り上げるように滑空突入した。
目指すは基地の中枢、ジンウェイ元帥の指揮センター。
しかし、その道は地獄だった。
前方に広がるのは、中国人民解放軍の激烈な抵抗線。
敵の重火器、対空砲火が烈火の如く降り注ぎ、地雷原に続いてはガウス機銃とロケット砲の集中砲火が彼女を狙う。
だが、ここで待っていたのは第108連隊の勇敢なT-51B装甲兵たち。
彼らは特殊兵装の一つ、強力なヌカ・ランチャーを駆使し、対抗射撃の前線を形成。
ヌカ・ランチャーの怒涛の反撃
「突撃開始! 全火力を集中しろ!」
ネイト軍曹の号令と共に、T-51B装甲兵は激しい砲火を浴びながらも前進。
次々と発射されるヌカ・ランチャーの榴弾が敵の機関銃陣地や敵歩兵に炸裂し、まるで火の雨の如く燃え盛る。
敵陣の一部は爆発に巻き込まれ、混乱と悲鳴が入り乱れる。
中国軍の対抗放火戦術は熾烈を極めたが、第108連隊の火力が突破口を開く。
敵陣壊滅
敵の機関銃砲座が次々に爆破される中、前線は急速に崩壊。
中国軍は指揮系統が乱れ、徐々に撤退を余儀なくされた。
「目標地点まであとわずか!ジンウェイ元帥の指揮センターを確保せよ!」
ノーラは戦況を見極めながら、T-60のセンサーで施設内部の動きを読み取る。
緊迫の最終アプローチへ
だが、ジンウェイ元帥の暗殺任務は容易ではない。
重装甲の護衛兵、最新鋭の自動防衛機械兵器が待ち受ける中、ノーラは冷徹な眼差しで一歩ずつ進む。
「ここで終わらせる……ジンウェイ元帥、覚悟しなさい」
AD2077年1月18日・アラスカ戦線・敵最終防衛基地地下司令室前
弾丸の音が止んだ。火と血の匂いが、ただ静かに空気を満たす。
ノーラ・ヘイスティングス中佐が滑るように瓦礫の中を進んだとき、
その視界に映ったのは―― 地面に倒れたジンウェイ元帥の亡骸。
距離、およそ100メートル。
その両脇には、T-51Bの外殻が傷だらけのハリストン少佐と、片膝をつくネイト軍曹が立っていた。
しかし、不可解だったのは――
ジンウェイの死体に、血の跡が一切ない。
銃創も斬撃も見えず、ただ穏やかに眠るように冷たく横たわっていた。
ノーラは、一歩だけ進み、冷笑を浮かべる。
「……交渉、失敗したのね」
その言葉に、誰も答えなかった。
ノーラはそれ以上近づかず、ネイトの顔を見ることもなく、くるりと背を向ける。
そしてそのまま、何も言わずに──
ノーラ・ヘイスティングス中佐は戦場から姿を消した。
数時間後
北アラスカ・氷原の地下、誰もいない通信施設跡地
雪解け水の滴る、ひび割れた床の上で、ノーラは一人、仮設コンソールに座っていた。
燃え残った軍装。背中にはもう、あの赤い階級章はない。
そして彼女は、ただ独り言のように、呟いた。
「……中佐としての役割は、これで終わりね」
「生き残ることに、期待なんてしていなかった。
ネイト軍曹、お前にこの階級を明け渡しても――問題など、何もない」
「たとえ、お前がこの後死んだとしても……悲しみなど、あたしには無い。」
「この先に待つのは、望まない“地獄の平和”。
望まない“妻”としての振る舞い。そんなもの、もういらないの」
ノーラはゆっくりと、肩の部隊エンブレムを外した。
それは“英雄ノーラ”を象徴する最後の証だった。
「英雄の名前も、階級も──
最初から、あたしには必要なかったのよ。」
「……この英雄の名を、お前にあげる。ネイト軍曹」
彼女の目に涙はなかった。ただ、静かに立ち上がり、最後に背中越しに呟いた。
「名誉なんて、誰かが背負えばいい……あたしは、もう、要らない」
そして、再びノーラ・ヘイスティングスは“影”へと還っていった。
