第11章:女戦
吹雪の中、
ノーラ・ヘイスティングス中佐と中国軍の女工作員は、激しい格闘を繰り広げていた。
互いに一歩も引かず、動きは鏡のように鋭く、そして正確。
地形を利用し、崩れた金属板を蹴って飛び、鉄骨の支柱を壁にして打ち合う。
パシン! ガンッ! ザシュッ!
だが、次第にノーラの動きが相手を上回り始める。
──体操着に身を包み、白いノースリーブレオタードをアーマーの下に着た彼女は、
極限の柔軟性をもって敵の死角を制し、ついに──
ドッ!
ノーラの回し蹴りが敵の顎を打ち抜き、女工作員は無言で崩れ落ちた。
同時に、ノーラは素早く最後の迫撃砲弾に爆破タイマーをセット。
「これで……終わり」
タイマーが点滅を始めると同時に、彼女は高台から脱出の準備に入る。
一方、下方ではハリントン・ハリス中尉がすでに退路を確保し、無線で叫ぶ。
「ノーラ! 今すぐ離脱しろ、爆破まであと数秒だ!」
しかし、次の瞬間――
ゴォォン……!!
巨大迫撃砲が、轟音と共に爆発。
その衝撃波が雪をまきあげ、火柱が空を焼いた。
ノーラはとっさに回転ジャンプで高く飛び上がる。
炎が彼女の背中をかすめ、白いノースリーブのレオタードが火を噴いた。
バッ……!!
火が布を焼く。だがノーラは冷静だった。
「――このくらいで、止まってやらない」
空中で両腕を広げながら、燃えるレオタードの上半身を強く振り払い、
着地と同時にその布を脱ぎ捨てた。
激しい爆発の余韻が去ったころ、
ハリントンの足元に、何かがひらりと落ちた。
ノーラの白いグリーンベレー帽だった。
それは戦場に残された、ただ一つの証だった。
ハリントン
「……まったく、お前ってやつは」
彼はそれを拾い上げ、苦笑した。
「まだ、生きてるんだろ?」
どこかでまた、ノーラの気配が風のように消えた。